そもそもの話、「就職活動」とは何か?
Q.【ブログ記事】そもそも、「就職活動」とは何か?
A. ご存知のように、法科大学院修了生の大多数は、学部時代に就職活動を行っていません。そんな法科大学院修了生が就職活動を始める際、「そもそも、就職活動とは何か?」という疑問にぶち当たることが少なくないようです。 今日は、この素朴かつ本質的な疑問、「就職活動とは何か?」について考えて行きたいと思います。 当たり前の話ですが、就職活動を行うと、『仕事』を手に入れることが出来ます。では、『仕事』を手に入れることで、人は何を得て、何を失うのでしょうか。ざっとまとめると以下のようになります。 [得るもの] お金、業務経験、スキル、社会的地位、信用、人脈 [失うもの] 時間、エネルギー そして、これまた当然の話ですが、入社する企業によって、得られるお金の額、経験、スキル幅、社会的地位、信用、人脈は異なり、失う時間数(拘束時間数)、失うエネルギー(疲弊度合い)も異なることになります。 そのため、どの企業に入社するかにより、その後の人生・生活が大きく変わって来ると言えます。 その意味では、就職は、成し遂げたい人生・生活を達成するための「手段」と位置付けることが出来ます。 だから、就職活動を行う上では、まず、 ➊ご自身がどんな人生・生活を送りたいのかの「ライフビジョン」を考え、 ➋そこに至るためにどのようなキャリアルート(選択肢)が想定できるのか を考えなければなりません。 例えば、「波風の少ない安定した人生を送りたい」というライフビジョンがお有りであれば、【安定した雇用】、【心身の健康を害さない就業環境】をキーワードとして考え、 ・ホワイトな環境の安定大企業で出世競争を勝ち抜き定年まで勤め上げる ・何社目かの転職でホワイトな環境の安定大企業に入社し出世競争を勝ち抜き定年まで勤め上げる ・引く手あまたのハイスキル人材になり、ホワイトな環境の企業を渡り歩く といったキャリアルートを想定することが出来ると思います。 もっとも、就職・転職市場においては、ただ強く願っただけでは希望する選択肢を手にすることは出来ません。 結局のところ、人は自分の市場価値に見合った選択肢しか手にすることが出来ないからです。 そのため、ライフビジョンを定め、そこに至るまでのキャリアルートを想定した上で、自分の市場価値を把握し、その市場価値と照らし合わせた ➌ベストポッシブル(可能性がある中で最上)な選択肢=企業群を模索する必要があります。 そして、ご自身のベストポッシブルな選択肢の見定めが出来てはじめて、 ➍その企業群の内定を獲得するために、書類対策・面接対策などを行う という段階に入ることになります。 普段、法科大学院修了生の就職支援をしておりますと、就職活動という未知の活動に対する不安の大きさからか、一番目に見えやすいところ、すなわち、➍の書類対策・面接対策ばかりに奔走している方が非常に多い印象です。 しかし、繰り返しになりますが、就職活動は成し遂げたい人生・生活を達成するための「手段」です。ライフビジョンやそこまでのルートを描くことなく就職活動を行った場合、せっかく頑張って手に入れた選択肢(内定)が希望するライフビジョン・キャリアに繋がらないおそれがあります。 また、ご自身の市場価値を認識し、ご自身のベストポッシブルな選択肢がどの辺りのものなのかを認識しないままに就職活動を行うと、 ・市場価値に見合わない企業への応募を繰り返した結果、就職先が一向に決まらない ・より良い選択肢が望めたにも関わらず、自分を安売りしてしまう といった事態を招く可能性があります。 一般論として、「就職活動では自己分析が大切」と言われることが多いですが、そのゆえんは、こういったところにあると考えています。 就職活動を開始する法科大学院修了生の中には、司法試験合格という人生の目的を失ったショックからか、就職活動に対して、どこか他人事、投げやりなスタンスで臨んでいる方がおられます。その結果、➊ライフビジョンや➋キャリアルートを考えるという部分をおろそかにしているところがあると言えます。 しかし、司法試験から方向変換して、豊かな人生・満足度の高い人生を送っている先人はたくさんいます。まずは、「ここから始めるのだ」という意識を持った上で、「自分の人生で成し遂げたいことは何か?」という問いに向き合うことから始めてみて欲しいと思います。 この記事を読まれた方は、ぜひ下記の記事も読んでみてください。 【筆者プロフィール】 法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。 2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。
齊藤 源久