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就職ノウハウ

法科大学院修了生が面接で言ってはならないNGワード

Q.法科大学院修了生の面接でのNGワードを教えてください。

A.

法科大学院修了生の就職面接では、面接中の思わぬ一言が低評価を招くことも珍しくありません。本日は、法科大学院修了生が面接で決して言ってはならないNGワードをご紹介します。

 

 

「司法試験に未練がある」

法科大学院修了生に限らず、企業がポテンシャル採用枠で人を採用する場合、最も気になるのが「すぐに退職しないか」という点です。即戦力ではない以上、中長期的視点で採用した人材を育成しようという考えを企業は持っています。逆に、ようやく戦力に育って来たタイミングで退職された場合には、それまで投資して来た教育コストが無駄になってしまうことになります。そのため、「すぐに退職しそうにないこと」は、ポテンシャル人材を採用する上での重要な選考要素となっています。

こと、法科大学院修了生については、経歴上、“司法試験に合格して法曹になりたい人(なりたかった人)”というイメージが強いですので、司法試験再受験を理由に短期退職するリスクの高い人材と見られがちです。そして、せっかく我慢して育成した人材が、退職して司法修習に行くことを喜ぶ企業は、ほぼ存在しません。

そのため、面接において、司法試験への未練を微塵でも匂わせるような発言は、即落選に繋がりかねない決定的なNGワードになります。

 

 

「ステップアップ・キャリアアップしたい」

上述のように、企業はポテンシャル採用枠で人材を採用するときに、特に、「短期退職のリスクの大きさ」に神経を尖らせています。そのため、面接中に『転職』を想起させるフレーズを使用した場合、それを理由に「短期離職のリスクの大きな人材」として、ネガティブな評価を下されるおそれがあります。そして、その『転職』を想起させるフレーズの代表格が「ステップアップ」や「キャリアアップ」という言葉です。

他意はなくても、会社を踏み台に他社にホップ・ステップ・ジャンプして行こうとしている人材と勘繰られることが多いためです。

 

 

「学びたい・成長したい」の多用

法科大学院修了生は、勉強熱心で向上心が強い方が多いためか、面接中に「学びたい」、「成長したい」といったフレーズを連呼する方が少なくありません。しかし、面接官の中には、「お金をもらって働くのに、学びに来る気なのか…」と、そうした発言をネガティブに捉える面接官もいます。お金をもらって働く以上、「学び・成長すること」よりも、会社に「貢献すること」が優先されてしかるべきという考えがあるからです。

まずは、貢献が第一に来て、貢献しながら、学び・成長するという考えを持っていることを面接官にしっかりと示す必要があります。

 

 

「落ち込みやすいタイプです」

法科大学院修了生の中には、「ご自身の短所は?」といった質問を受けた際に、正直に「落ち込みやすいところです」と回答をする方がおります。しかし、企業がポテンシャル採用枠で人材を採用する場合、「休むことなく会社に出社し続けられる人材か否か」に着目することが多いと感じています。どんなに優秀な人材であっても、会社に来なくなってしまったら成長しないからです。

「落ち込みやすいタイプ」の人という心証を与えてしまった場合、落ち込みの度合いによっては、精神面の健康を害し、会社に来なくなってしまうのではという懸念を抱かれやすくなります。そのため、面接においては、メンタル面でダウンしやすいという心証を与える発言は避けた方がよいと言えます。

 

 

「教えてもらいたい」

社会人経験がない(または浅い)ことへの不安の大きさや、学習意欲の高さからか、「入社後に出来るだけ手取り足取り教えて欲しい」という希望を持つ法科大学院修了生は少なくありません。そのため、面接時に「どれだけ手取り足取り教えてもらえるのか」を質問する方が多くいます。

しかし、企業にとって新人を教えることは、“将来に対する投資”であると同時に、“コスト”でもあります。企業は、新人が何かを教わっている時間に対し給与を支払うと共に、指導係が新人を指導している時間に対しても給与を支払うことになるからです。

実際、「一を聞いて十を理解できる人材が欲しい」、「一から十まで教えないといけない人材は負担感が大きい」といった企業側からの声を頻繁に耳にします。

ましてや、法務求人に応募する場合、新卒枠ではなく、ある程度の即戦力性が期待される中途採用枠に応募することになるため、より一層早期に会社に貢献することが求められます。

そのため、面接時に「丁寧に教えて欲しい」、「どれだけ手取り足取り教えてくれますか?」といった趣旨の発言を行うことは、ネガティブな評価に繋がりかねないリスキーな発言になると言えます。

ここでもやはり、自分の出来る範囲で最大限の「貢献」を行うことを第一に念頭に置きつつ、出来る限り上司の手を煩わせずに自ら学ぶという姿勢を示すことが大切です。

 

 

「転勤・部署異動は嫌です」

法科大学院修了生に限りませんが、転勤を嫌い、「転勤の可能性があるけど大丈夫?」と聞かれたときに「転勤はちょっと…」と答えてしまう方が少なくありません。また、法科大学院修了生の多くの方が『法務としての専門性を高めて行きたい』という思いを持っているために、「途中で別部署に異動になる可能性があるけど大丈夫?」と聞かれたときに渋った反応を見せてしまうことがあります。

しかし、企業での採用は原則「総合職」としての採用となるため、仮に東京本社勤務の法務部門での採用となった場合でも、その後に会社の意思により比較的自由に転勤・部署異動を命じることができるのが実状です。

これは、選考時に転勤・部署異動の可能性に全く言及しない企業においても同様です。

 

 

総合職では、異動・転勤はほぼ避けられません。

国内外問わず転勤になる可能性はありますし、

配置転換や職種転換に伴う異動もしばしば発生します。

 

出典:【総合職と一般職の違い】コースが生まれた理由を徹底解説

 

 

現在では、勤務地や仕事内容などを限定する代わりに給与など待遇面がやや下がる“限定正社員”という契約形態も一部登場していますが、企業側は依然として原則、総合職(従来型の正社員)としての採用を第一に考えているため、本当に転勤や部署異動を拒絶したいのであれば、当初より「“限定正社員”としての雇用契約締結を希望する」旨を表明する必要があります。

しかし、そうした表明は、企業側が求める人物像(従来型の正社員として雇用契約を締結できる人)とのミスマッチを強調する形になりますので、現状ではどうしても選考上、ネガティブに作用する可能性が高いと思います。

結局のところ、転勤・部署異動について面接で尋ねられた際は、上述のリスクを承知の上で「“限定正社員”としての雇用契約締結を希望する」旨を表明するか、「転勤・部署異動も問題ありません」と回答するかしかないと言えます。

 

 

「法律知識を生かしたい」

法科大学院修了生の多くが法務職を志望する理由を尋ねられた際に挙げるのが「これまでに学んだ法律知識を生かしたい」というものです。法科大学院や司法試験受験を通じ、お金と時間を投じて手にした法律知識を活用したいと考えるのは、ごく自然なことだと思いますが、実はこの「法律知識を生かしたい」という発言は、法務実務への理解の浅さを感じさせるネガティブな発言としてとられることがあります。

と言うのも、企業法務で多く取り扱う法令(独禁法、下請法、景品表示法、不正競争防止法、消費者法etc.)と法科大学院修了生が学んで来た六法+αとは、知識領域がほとんど重ならないためです。

法務実務に関しての情報収集を十分に行った上で、ご自身が法科大学院や司法試験受験を通じて手に入れたもの(法律知識以外のもの)を改めて棚卸しし、それがどのように法務実務に生きるかを検討した上で、法務職への志望理由を練る必要があります。

【参考記事】法務部で働きたい法科大学院修了生がアピールすべき強みとは?

 

 

「労働者を守る弁護士を目指して来ました」

選択科目で労働法を取っていた法科大学院修了生の中には「労働者側に立って企業と戦う弁護士」を目指して来た方も多いと思います。しかし、企業からすると、「法務担当者=会社側に立って仕事をする立場の人」という認識を持っているため、そのポジションに「労働者側に立って企業と戦おうとしていた人」が就くことに懸念・おそれを抱く可能性は高いと言えます。

実際、労働法で悪徳企業を取り上げた判例を多数学ぶ中で、『すぐに悪いことをしようとする経営者側から労働者側を守らねばならない』という価値観で固まっている法科大学院修了生も少なからずいます。

ただ、実務上、法務担当者のスタンスとしては、経営者の立場・苦悩に寄り添いつつ、会社の持続的成長のために法令遵守(労働者保護)を訴えるという形になります。そのため、労働法選択の法科大学院修了生は、面接時に単に労働法への関心を示すに留まらず、経営者の立場にも寄り添える姿勢を示す必要があります。

 

 

本日は、法科大学院修了生の面接におけるNGワードを紹介して来ました。他意なく伝えた言葉が、思わぬ形で解釈されネガティブな評価に繋がるおそれがありますので、ぜひ、本記事を一読して、今後の面接対策に生かしていってください。

 

 

この記事を読まれた方は、ぜひ下記の記事も読んでみてください。

『法科大学院修了生の面接失敗15パターン』

『法科大学院修了生が面接に向けて行うべき準備』

 

 

 

【筆者プロフィール】
齊藤 源久

法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。

2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。

 

 

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