就職をする上での不安要素を挙げるとき、
・ちゃんと仕事が出来るだろうか
・慣れない環境に溶け込めるだろうか
といった不安が挙げられると思います。
でも、もっとも多くの法科大学院修了生が懸念されるのは、「入社先の企業がブラック企業ではないか」という点ではないでしょうか。
法科大学院や司法試験の勉強では、特に紛争性の高い案件を扱うことが多いため、酷い企業の事例を見る機会も少なくなく、その辺も、こうした不安を一層助長していると思います。
※選択科目で労働法を選択していると、とんでもない企業の事例を多数目にするため、この傾向はより顕著だと思います。
こうした話題に関連して、先日、興味深い記事を目にしました。
「ホワイト企業は従業員に対してホワイトな分、そのしわ寄せを顧客に負わせている」といった刺激的な記述もあり、賛否両論、多くの議論を巻き起こしているようです。私個人としても、全てに賛同出来るとは言い難かったのですが、経験上、一部の内容には首肯できる部分がありました。
要点としては、「ホワイト企業に入れるのは市場価値の高い人」という点です。
ホワイト企業は必然的に人気が高くなりますので、それだけ入社にあたっての競争が激しくなる傾向にあります。
では、そのような“より取り見取り”状態のホワイト企業から見て、欲しい人材とはどのような人材でしょうか。
ここで気をつけなければならないのは、ホワイト企業が欲するのは、「ホワイトな環境を大好きな人材」ではないということです。言い換えると、「御社はホワイトなので、ぜひ入社したいです」という人材に対して、ホワイト企業側は特に魅力を感じないということになります。
なぜ、そうした帰結になるのでしょうか。
ホワイト企業もブラック企業も市場原理にさらされながらビジネスを行っておりますので、いずれも、自社の事業を一緒になって伸ばして行ってくれる人に入社して欲しいと考えています。
そんな中、ホワイトである点に惹かれて応募して来た応募者は、自社の事業に対する興味関心よりも、自身の就業環境に対する興味関心の方が強い応募者と推定されるため、企業側からすると、「自社の事業を伸ばしてくれそうだ」という期待を抱きづらいという面があります。
また、ホワイトな環境下でないと嫌だという人材は、働く意欲や頑張る意欲が強くない人材と見られる傾向にありますので、その点も、ホワイト企業側が魅力を感じない理由になっていると思います。
結局、ホワイト企業もブラック企業も、欲しがる人材層は同じ。すなわち、能力が高く、働く意欲・頑張る意欲が強く、自社の事業への興味関心が強い人材=市場価値の高い人材ということになります。そして、就活生や転職者から人気の高いホワイト企業の立場からすると、そうした市場価値が高く各社からの人気の高い人材の採用はとても現実的です。
そのため、ホワイト企業に入社したければ、企業側に、仕事が出来て意欲も強い人と思われるか、裏技として、競合のいない誰も知らないホワイト企業を何とか発掘して見つけるか、いずれかしかないということになります。
しかし、これだけ求人媒体サイトや人材紹介会社の数が増えた中で、競合のいない誰も知らないホワイト企業を探すのはかなり困難になって来ています。
やはり、「シンプルに市場価値を上げたうえで、ホワイトな環境への志向性を隠しながら、ホワイト企業の面接を受ける」というのが、ホワイト企業入社への一番の近道になりそうです。
【筆者プロフィール】
齊藤 源久
法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。
2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。
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