書類を応募したにも関わらず、何週間・何ヶ月も選考結果が届かない。面接を受けてから何日も経つのに、連絡が来ない。こんな状況に直面している法科大学院修了生は少なくないと思います。本コラムでは、選考結果が保留となっているときに企業で何が起きているのか、選考結果を待つ上でどのような心持ちでいたらよいのかを解説して行きます。
選考結果が出るまでの期間
そもそも、どのくらいの期間、選考結果を待たされたときに「遅い」ということになるのでしょうか。
正直、選考結果が出るまでの期間は、企業によりかなりマチマチです。スピード感のあるベンチャー企業では、書類提出から数時間で選考結果が出ることがありますし、牧歌的な企業や選考をそれほど急いでいない企業では、書類提出から1ヶ月~2ヶ月ほど経って、ようやく選考結果が届くケースも珍しくありません。面接の選考結果は、もう少し早く届く傾向がありますが、速い企業で1日、遅い企業で3週間ほどとなることが多い印象です。
その意味で、どの時点を過ぎたときに「選考結果が届くのが遅い」と言えるのかを見極めるのも困難だと言えます。
長らく選考結果が届かないとき、企業で何が起きているのか
では、企業から長らく選考結果が届かないとき、企業で何が起きているのでしょうか。
基本的には、(1) 他に有⼒な応募者がいて、後回しにされている、(2) 評価が低く、無視されている、(3) 単に担当者が忙しく選考を進められていない、これら3つのパターンのいずれかである可能性が高いと思います。
(1) 他に有⼒な応募者がいて、後回しにされている
他に評価の高い応募者達がいて、そちらの選考を優先的に進める方針となった結果、その他の応募者達については、選考結果を保留にしているパターンです。選考結果がなかなか届かないケースでは、このパターンが一番多い印象です。
特に、未経験の法科大学院修了生が法務職に応募した場合、法務経験者と応募がバッティングすることがありますが、こうしたケースでは、法務経験者の選考を優先されて、選考結果が保留となることが非常に多いです。
評価の高い一部の応募者(法務経験者、ハイスペックな法科大学院修了生)を先に面接し、「優先的に進めていた応募者達の中に良い人がいなかった」又は「良い人がいて内定を出したものの内定辞退された」というタイミングで、保留としていた応募者を再度検討し、ようやく、選考通過・落選の結論が出されるという流れになります。
このパターンでは、選考が優先的に進められた応募者の選考の成否が出るまでの間、ずっと選考結果が保留となりますので、1ヶ月以上待たされるケースも少なくありません。
(2) 評価が低く、無視されている
他に有り得るパターンとしては、「評価が低く、事実上の落選ではあるものの、企業側が落選連絡を怠っている」というパターンです。
残念ながら、全ての企業が落選者に対して、しっかりと落選連絡を行っているわけではありませんので、一定数、こうしたパターンも有り得ます。
また、そもそも、社内ルールとして、落選者には選考結果を告げないという方針の企業も一部あり、確信犯的に無視しているケースもあります。
(3) 単に担当者が忙しく選考を進められていない
ここまでご紹介した(1)のパターン、(2)のパターン、いずれも選考評価の低さを理由に待たされるというものでした。
一方で、選考評価が低いわけではないものの、一向に選考結果が届かないケースもあります。それは、採用担当者が多忙で仕事が回っていないケースです。
こうしたケースでは、採用担当者に出張が多い、応募者が多数いる、新卒を迎え入れる準備との兼ね合い、連休前で仕事がたまっている等が原因となっていることが多い印象です。
過去には、多忙を理由に、書類の応募から4ヶ月が経過して、ようやく書類選考通過のご連絡をいただいたこともありました。採用担当者が多くの業務を抱え、それらに忙殺されている企業は、想像している以上に多いのだと思います。
選考を待つ間、どのようなスタンスで待つべきか
それでは、長らく選考結果が出ない間、法科大学院修了生はどのようなスタンスで選考結果を待てばよいのでしょうか。
せっかく頑張って書類を作ったり、面接準備をして面接に臨んだのですから、結果が気になるのは、しごく当然のことだと思います。ただ、企業として、「選考結果を届けない=事実上の落選」ではないものの、「選考結果を届けない=少なくとも、この時点で選考を前に進めるつもりはない」というのは確かです。選考が通過しているにもかかわらず、選考通過を伝え忘れていたというケースは、ほぼ聞きません。その意味で、選考結果が届かない事実の奥にポジティブな要素が隠れている可能性はほぼゼロと考えてよいと思います。
また、選考結果が出るまでの期間は、他の応募者の数や質、企業側のもともとのスピード感、想定している採用時期、採用担当者の抱えている業務量など、およそ、応募者の側ではコントロール出来ない要素の相互作用により決するものです。
『自分にコントロールできないことは一切考えないですね。
考えても仕方ないことだから。
自分にできることだけに集中するだけです。』
松井秀喜(元プロ野球選手)
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元ニューヨークヤンキースの松井秀喜さんも、おっしゃっていましたが、自分にコントロールできないことに気を病むことほど、非効率なことはなく、自分に矢印を向けて自分にコントロールできることに全力を注いでいる人ほど、成功に向かってエネルギーを注げるようになるのだと思います。
そのため、一度、応募した後又は面接選考を受けた後は、当該企業については一旦忘れ(ある種なかったものとし)、選考通過の連絡が届いたタイミングで、次の選考へのモチベーションを高めて行くというのが、理想的なスタンスとなるのではないでしょうか。
特に、人材紹介会社経由でご応募いただいた求人については、人材紹介会社側がきちんとスケジュール管理を行い、定期的に選考結果の確認をしに行きますので、応募後は応募先企業については意識の外に置き、確認・催促については完全に人材紹介会社にお任せいただいてよいと思います。
もっとも、他社の選考が最終局面に進み、そちらで内定となった場合の内定受諾期限との関係から、選考結果が出ていない企業の選考に早くシロクロをつけたいというケースもあると思います。
通常、特にそういった背景がないままに、単に「選考を早めてください」と伝えても、選考が早まる可能性は低いですが、「選考保留期間が長引けば選考辞退となってしまう」状況にあることを伝えることで、選考が早まるケースは少なくありません。
そのため、もし、他社の選考が最終局面に進みそうになったら、ご自身で応募された企業に対してはご自身で、人材紹介会社経由で応募した企業に対しては人材紹介会社を通じて、現在の他社進捗を伝え、選考を早めるよう依頼してみるとよいと思います。
【筆者プロフィール】
齊藤 源久
法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。
2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。
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