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就職ノウハウ

法科大学院修了生の就職活動ロードマップ

Q.法科大学院修了生の就職活動のロードマップ(全体像)をざっくりと教えてください。

A.

以下をご確認ください。

 

1.就職活動を始める前に

事務所内弁護士・検察・裁判官を目指して来た法科大学院修了生が方向変換を考える際、“企業就職”という有力な選択肢があります。人生の選択肢を無為に限定しないという意味では、この“企業就職”という選択肢を検討することは有意義だと思いますし、実際、司法試験受験を経て企業に就職し、生き生きとしたキャリアを築いている方は少なくありません。

 

一方で、法科大学院修了生を採用する企業の中で、司法試験の受験継続を認める企業は全体の3%もない状況です。また、合格者に対しても、「本当は事務所就職が第一志望なのでは?」と疑いがちです。そのため、法科大学院修了生の採用を検討する大多数の企業において、

「再受験のリスクはないか?事務所内弁護士への未練はないか?」

を選考過程で慎重に確認して来ます。企業の採用担当者は、膨大な数の面接経験を通じて、応募者の発言の真偽を鋭く見抜く目を身に付けていますので、法曹に気持ちが残っている状態で選考に臨んだ場合には、まず、そのことを見抜かれ落選する可能性が高いと考えた方がよいでしょう。

 

その意味では、企業就職に踏み切る上では、自分自身ひいては面接官を説得できるだけの「司法試験をやめる理由」、「インハウスになる理由」が必要になります。まずは、しっかりと、ご自身の心に向き合い、なぜ企業での就職を希望するのかを繰り返し自問自答し、自らの言葉でそれを説明できるよう取り組んでみてください。

 

 

 

2.就職活動、何から始める?

<Step1 キャリアの方向性を定める>

就職活動に踏み切ることを決意した法科大学院修了生が最初にぶつかる壁が、「これからどの方向に舵をきればよいか」という悩みです。特に司法試験に合格していない方の場合、“法曹になる”という大きな目標からの変換は簡単ではないですが、ここが定まらないことには、自分自身のエネルギーをどの方向に注ぎ込めばよいのかがわからないことになります。

進むべきキャリアの方向性のヒントは、「なぜ、法曹を目指したのか」という問いにヒントがあることが少なくありませんので、まずは、「なぜ、法曹を目指したのか」を自問自答した上で、「法曹として仕事をしたときに得られる満足感と同種の満足感を得るには、どういう仕事をすればよいか」、様々な職種に関する情報収集を行いながら考えてみてください。キャリアに関する相談については後述する人材紹介会社やハローワークでも可能です。

 

<Step2 求人情報を手に入れる>

だいたいの方向性が固まりましたら、その方向性に沿った「求人情報」を手に入れる必要があります。また、求人情報を見ながら、方向性を定めて行くという側面もあります。

 

➊人材紹介会社への登録
人材紹介会社とは、厚生労働大臣の許可のもと、求人依頼を受けた企業に対し、登録人材を紹介する事業を行う会社です。企業からの紹介料で収益を上げるビジネスモデルをとっており、そのため、求人紹介、就職コンサルティング、応募書類の添削、企業との代理折衝その他のサービスを全て無料で利用できます。また、登録人材が就職を果たしてはじめて企業から紹介料を受け取れるビジネスモデルのため、就職を目指す法科大学院修了生とはWIN-WINな関係にあり、手厚いサポートを受けながら、二人三脚で就職を目指すことができます。就職活動に不慣れで、各種情報が不足しがちな法科大学院修了生にとっては、マッチしやすい選択肢になるかと思います。

 

➋求人媒体サイトへの登録
マイナビ転職、@type、エン転職といった求人媒体サイトの登録フォームから、必要情報を入力して会員登録できます。求人媒体サイトは、基本、無料で利用でき、さらに多数の実名求人が掲載されている点が特徴的です。また、登録すると、企業から応募や面接のオファーが舞い込むこともあります。ただ、求人媒体サイトに掲載された求人票においては、企業が採用可能性を度外視した、高めの求人要件ハードルを設定していることが多く、未経験の法科大学院修了生が応募できそうな求人が結果的に少なくなる傾向があります。

マイナビ転職

@type

エン転職

 

➌ハローワークへの登録
下記のサイトからハローワークに掲載された求人を検索することができます。さらに、ハローワークを訪問することで、より詳細な求人情報を得られるケースもあります。

ハローワークインターネットサービス

 

ハローワークは、地域に根差した中小企業の求人を多数取り扱っている点が特徴です。無料で利用でき、職員が就職相談に乗ったり、初回の企業への連絡を行ったりといったサポートをしてくれます。ただ、企業側もまた無料で求人を掲載できる分、掲載されている求人は玉石混交になりがちで、就業環境が悪く離職率の高い企業の求人も相当数含まれてしまっているとの報告もありますので注意が必要です。

 

 

 

3.応募書類の作り方

<Step1 履歴書の作り方…A4で2枚>

➊学歴欄
・企業側から指定がない場合は、高校の学歴からご記載ください。
・浪人や留年等、学歴に空白期間がある場合は、必ず、空白期間に何をしていたかの補足説明を行ってください。

 

➋職歴欄
「職歴なし」という記述は、企業側から見たときに、想像以上にショッキングな記述となるおそれがありますので、アルバイト等で社会と接点を持ちながら就業した事実を伝え、少しでもネガティブな印象を和らげたいところです。
そのため、職歴のない方でも、アルバイトの経歴がお有りであれば、アルバイトの経歴であることを明記した上でそちらを記載することをお薦め致します。

 

➌資格欄
・法務職に応募する場合に、企業からの評価に繋がりやすい資格記載は以下になります。
TOEIC(600点以上から)、司法試験本試験合格、司法試験短答式試験合格、ビジネス法務検定2級、宅地建物取引主任者、知的財産管理技能検定2級、ビジネス著作権検定、ビジネスコンプライアンス検定、秘書技能検定2級・3級、簿記2級・3級、普通自動車免許

 

➍志望動機
基本的に法科大学院修了生はポテンシャル採用枠(ポテンシャルの高さと意欲面を見て評価する枠)に応募することになりますので、入社意欲の強さを示せるよう、出来るだけ厚く志望動機を書くようにしてください。ポイントとしては、自己PR的な内容をやや控え、応募先企業への興味関心を示せるよう、応募先企業の特徴に関する言及を増やすことです。また、ご自身がどのような基準で企業選びを行っているかの軸を盛り込めると、一本筋の通った説得力のある志望動機になると思います。

 

➎履歴書用の写真
写真が貼り付けられている書類の方が、選考通過率が高くなるというデータがありますので、最悪、ご自身の携帯で撮影した写真でも構いませんので、履歴書には出来るだけ写真を貼り付けるようにしてください。

 

<Step2 職務経歴書の作り方…A4で0.5~1.5枚>

法科大学院修了生の中には、社会人経験がないことを理由に職務経歴書の作成を躊躇する方が少なくありませんが、アルバイトやインターン・エクスターン、ボランティア等の経験でも構いませんので、そちらを元に職務経歴書を作成するようにしてみてください。

企業が法科大学院修了生を採用する際に、一番不安に感じるのが”社会性”の部分ですので、職務経歴書の記載から、「ただ勉強に明け暮れていたわけではなく、社会と接点を持って生きて来たこと」をアピールした方が良いというのが理由です。

また、人の“仕事ぶり”は、雇用形態に左右されませんので(アルバイトで良い働きぶりの方は正社員でも良い働きぶりができる)、職務経歴書を通じてご自身の“仕事ぶり”の伝わるエピソードをアピールすることは、ポテンシャル採用枠での就職活動においては大変有効です。

 

<Step3 自己PR書の作り方…A4で1~1.5枚>

法科大学院修了生が応募するポテンシャル採用枠においては、「人物面」の評価が相応のウェイトを占めることになります。ポテンシャル採用枠で採用する人材は、未経験であるがゆえに、入社後に“教える”ことが前提となるからです。教えることが前提となりますと、

・教えやすい人(話しやすい、素直)

・教えたくなる人(成長しそう、応援したくなる)

を採用したくなるのは当然のことかと思います。

そして、その「人物面」をアピールするかっこうの場が、自己PR書ということになります。

自己PR書を作成する上では、まずは、「自分をどのような人間と思わせたいか」を考えていただき、その上でそのような印象を与えるために、どのようなエピソードを紹介できるかを検討してみてください。

※Ex.「明るく、すぐに周囲に溶け込める人材」と思われたい

→大学時代のサークルの飲み会の話、法科大学院でのゼミの話、バイト先で大学生バイトの輪に溶け込んでいる話etc.

 

 

 

4.面接の準備と注意点

求人に応募し、書類選考を通過しますと、次は面接選考になります。面接では、主に次の点が評価項目として見られることになります。

・地頭 :レスポンスの早さ、話の理解力の高さ、話の説得力などから推測

・人物面:話し方・話の聞き方から推測

・社会性:組織の中で周囲と交わりながら働けるか否か

・キャリア軸:これから何をしたい、何になりたいと考えているか

・志望度:本当に自社に入社したいと思っているか

 

<Step1 面接準備>

➊自己紹介の準備
ほぼ、どの企業からも自己紹介を求められますので、1分~1分半ほどで話せる自己紹介をあらかじめ準備しておいてください。
※名前、年齢、学歴、司法試験受験の事実、今現在は何をしているかetc. を話す人が多いです。

 

➋市販の面接本での面接シミュレーション
司法試験受験生活で忘れてしまった過去の記憶・エピソードの棚卸し、不意打ちの質問を減らせるといった効果があります。

 

➌企業研究
応募先企業に対して“志望度の高さ”を示すために、企業がどのような事業をやっていて、どんな競合他社がいるのか、事業の将来像はどのようなものになるのかといったことをインターネットや書籍等で情報収集してから面接に臨んでください。近年、企業研究の不足を理由に落選となる法科大学院修了生は少なくありませんので、逆に言いますと、企業研究を事前に丁寧に行うことが、面接での差別化の武器となります。

 

➍服装の用意
可能であれば、スーツを2着ほどご用意ください。高級なものである必要はありませんが、だらしなく見えないよう、サイズがフィットしたものを選ぶことをお薦めします。また、法科大学院修了生は新卒大学生とは年齢が離れていますので、コスプレに見えないよう、出来るだけリクルートスーツは避け、通常のスーツを着用するようにしてください。

 

<Step2 面接当日の振る舞い>

➊持ち物
企業側より指定があれば、指定された物を。特に指定がなければ、下記をご持参ください。
・応募書類(プリントアウト可)
・筆記用具
※ただし、履歴書には別途写真貼付け。

 

➋来社時間
早く着く分には問題ないと考えて、開始時間よりかなり前に到着して、企業側を困惑させてしまう法科大学院修了生が相当数おります。企業を訪問する際は、約束の時間の7~10分前の受付到着をめどに訪問してください。
※高層ビルに入っている企業などは、受付からエレベーターに乗るまでに時間がかかってしまうケースがありますので、その点も踏まえて訪問する必要があります。

 

➌受付対応
事前に担当者名の指定があれば、「○時より~様とお約束している○○と申します。」と伝えてください。特に指定がなければ、「○時からの~職の面接で伺いました○○と申します。」と伝える形で問題ありません。
※受付時に身分証明書の提示を求められるケースがありますので、面接時は運転免許証や保険証等の身分証明書を携帯ください。

 

 

➍面接本番
開始前に面接官を座って待つパターンでは、下座又は指定された場所に着席の上、面接官の登場と同時にすかさず席を立ち元気よく挨拶をしてください。面接官が先に部屋で待っているパターンでは、ゆっくりと3回ノックし、入室を促されたら、そこで初めて扉を開け、入室後に椅子の後ろに立った状態で元気よく挨拶をしてください。

 

 

 

5.適性検査その他の試験

➊能力検査
言語能力、数的処理、論理的思考力等を確認するための試験になります。新卒向けの「SPI3」の問題集等を解いて早めに事前準備をしておいてください。ただし、法科大学院修了生が能力検査の結果が理由で落選になるケースは稀ですので、それほど過度に恐れる必要はありません。

 

➋性格検査
日頃の行動選択や考え方などに関する多角的な質問から、応募者の人となりや職種適性、社内人材との相性等を確認するための検査です。

 

➌法律試験
応募者の法律知識面がいかほどかを確認するための試験になります。20社に1社くらいの割合で課して来ます。民法債権法分野や商法の中で企業法務が絡みそうな箇所の条文知識を復習しておきましょう。それほど難しい問題は出ない印象です。

 

➍法務実務試験
実際に契約書を審査し、問題点を指摘するといった実務類似の試験がごく稀に課されることもあります。事前に応募先の業界からどんな種類の契約書をよく使うかを予測して勉強しておくとベストです。

 

 

 

6.内定入社までの過程

➊選考スケジュール
「書類選考+面接2回+適性検査(能力検査や性格検査)」
という選考方法が、一般的なモデルです。
※面接回数は、1回~4回(大多数は2・3回)です。
※多くの場合、書類応募から1~2ヶ月ほどで内定に至ります。

 

➋就職活動期間・応募数
◆総活動期間
約1ヶ月~18ヶ月。平均は「3~6ヶ月」ほど。
◆平均応募数
闇雲に応募を行った場合の平均応募数は約100件/内定1件。
ただし、ポテンシャル採用枠求人に絞って応募をした場合は、
5~15件/内定1件。

 

➌内定受諾期限
内定通知を受けたら、内定受諾の有無を検討します。期限は、内定通知から1週間ほどに設定されることが多いです。(一応、交渉可)

 

➍入社まで
会社の指定する入社手続き書類を準備しましたら、いよいよ入社です。入社時期は、内定受諾後、0.5~1.5ヶ月ほどです。(交渉可)

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