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就職ノウハウ

法科大学院修了生が法務担当者面接に臨む際の注意点

Q.法務担当者が面接官を務める面接(いわゆる法務面接)を受ける際の注意点を教えてください。

A.

企業就職を目指す法科大学院修了生の多くが希望する「法務職」。その法務職求人での選考過程で、しばしば、法務担当者が面接官を務める面接が設定されます。本記事では、そうした、いわゆる「法務面接」の攻略法・注意点について解説して行きます。

 

 

企業が法務担当者による面接を設定する目的

一般的に、面接官というと、まずは、人事担当者。そして、最後の関門として、役員(社長)が出て来るというイメージがあると思います。そうした中で、そもそも、なぜ、一部の企業において、法務担当者による面接が設定されているのでしょうか。

これは、シンプルに入社後に最も長く時間を過ごすことになるのが法務担当者であるため、選考に法務担当者の意見を取り入れたいという側面が強いと言えます。

 

では、法務担当者は面接の中で、応募者の何を見極めようとしているのでしょうか。

 

色々な考え方があるかもしれませんが、見極めのポイントとして重視されがちなのは、主に、①人物面の相性と②教育コストの2点になります。

 

①人物面の相性

どの法務面接でも重視されるのが、この「人物面の相性」になります。どんなに優秀な応募者であっても、既に形成されている法務部門のカルチャーにマッチしなければ、力は発揮できないですし、また、仮に部門自体のカルチャーにはある程度マッチしたとしても、入社後に直接関わる上長・同僚との相性が悪ければ、応募者・既存の法務担当者の双方にとって、ストレスの多い就業環境になってしまうおそれがあるからです。

そのため、会社のカルチャー(いわゆる社風)とは別に、部門のカルチャーとのマッチ度、直接仕事で関わる同僚・上司との相性などを確認する意義は小さくないと言えます。

 

■“会社全体のカルチャー”と“法務部門のカルチャー”が異なるケースも…

ここで気をつけなければならないのが、会社全体のカルチャーと部門のカルチャーとが大きく異なるケースも十分にあり得るという点です。

例えば、営業力の強さが売りで、会社全体としてゴリゴリ・イケイケの積極的な社風を有している一方で、法務部門にはそうした現場の社員達に対して、法的な観点から冷静に急所を突くように諫めるような仕事が求められている会社などもあります。そして、そうした会社における法務部門では、「大人しいけれど、言うべきところは引かずに冷静に言う」というカルチャーが醸成されていたりします。

 

実際、明るく元気にマシンガントークを繰り出す積極的な法科大学院修了生が、「部門のカルチャーと合わない」という理由で落選となるケースは珍しくなかったりします。

 

こうした部門のカルチャーは、外部からは見えづらいところなので、事前に見極めてから面接に臨むのは難しいと思いますが、一般論として、法務部門においては、「(ベラベラと雄弁に語る必要はなく…)相手を尊重する気持ちを持って、落ち着いた対話ができる」ことを好むカルチャーが醸成されているところが多い印象です。

そのため、法務面接においては、まずは、「相手の立場を尊重しつつ、落ち着いた対話が行える」ことをアピールしつつ、面接官の雰囲気を見ながら、徐々にご自身の特徴を出して行くというのが固い戦略になると思います。

 

■“上司や同僚となる人との相性”は実際のところ運任せ

一方で、上司や同僚となる法務担当者との相性については、部門のカルチャー以上に、事前把握が難しいところですので、ある種、“運”任せになるのは否めないところです。

部門のカルチャー自体にはマッチしていると判断されたケースでも、既に似たようなキャラクターの法務担当者がいて、キャラかぶりするという理由で落選となるケースなどもあったりします。

 

その意味では、「部門のカルチャー」とのマッチ度はしっかりとアピールしつつ、「上司や同僚との相性」については、開き直って運に任せ、仮にそれを理由に落選となっても、いい意味で割り切るというスタンスも必要になってくると思います。

 

②教育コスト

ここまで、人物面の相性を探るという側面に焦点を当てて解説して来ましたが、法務面接においては、「教育コストを見積もる」という側面も非常に強いと言えます。

ポジションを問わず、新戦力を採用する際に企業側が一番に気にするのは、教育コストの多寡です。そして、その判断には業務適性等の専門的な判断が一定程度必要になります。そのため、法務職の採用において教育コストを見積もる上では、実際に実務を行い、教育にあたる法務担当者が適任ということになります。

では、法務担当者は応募者の何を見て、教育コストの多寡を見積もっているのでしょうか。主に以下が挙げられます。

 

 

・実務スキルレベル(経験、知識)

・指導のしやすさ

・モチベーションの高さ

 

 

■実務スキルレベル

言わずと知れた、法務実務を遂行する上でのスキルレベルのことです。

「どんな業務経験があるか≒どんな業務ができるか」

「ビジネスマナーの習得度やビジネスリテラシー(理解力)の程度」

「法律知識レベルはどれほどか」

「他部署との円滑なコミュニケーションをとれるだけのコミュニケーションスキルがあるか」

といった点が選考要素となります。

こと、法科大学院修了生においては、実務経験がないケースが大多数になるため、面接では、主に、【ビジネスマナー】や【ビジネスリテラシー(世間一般のビジネスパーソンが知っている程度のビジネス常識】、【法律知識】、【コミュニケーション能力】を測られることになると思います。

 

皆さんの特に関心の高い【法律知識】については主に、

・民法の債権法分野(改正部分含む)

・商法

の条文知識を問われることが多いですので、面接前に総ざらいしておくとよいと思います。

 

■指導のしやすさ

主に、吸収力・理解力、教えやすい性格か否かという点を見られます。その意味で、話を聞く姿勢が重要になりますし、素直・可愛げがある(教えてあげたくなる)といったポジティブな心証を与えることも重要です。

 

■モチベーションの高さ

モチベーションの高い方には、吸収力の高さが期待できますし、教える側にとっても教えがいがあるため、その分、「教育コストが低い人材」という評価に繋がりやすいと思います。

 

 

以上、法務面接の注意点について解説して来ました。

通常の面接と好まれる人物像に大きな違いはありませんが、やや、「落ち着き」が重視される傾向があること、法律知識面について確認される可能性があることなどが主な違いになります。

一方で、法務面接は、応募先企業の法務部門の具体的な業務内容や仕事へのスタンス、仕事のスタイルなどを知る貴重な機会でもあります。

上述の注意点を意識しつつ、ぜひ、法務面接を仕事のイメージを掴むための有意義な場として、うまく活用してみてください!

 

 

この記事を読まれた方は、ぜひ下記の記事も読んでみてください。

『法科大学院修了生が語るべき「法務職の志望理由」』

『法科大学院修了生の選考と「筆記試験」』

 

 

 

【筆者プロフィール】
齊藤 源久

法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。

2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。

 

 

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