食品メーカー営業職に内定(31歳 男性)
本日は、司法試験受験期間を経て(ロースクール卒業)、この度、営業職に内定されたAさんにインタビューをさせていただきます。
MS記者
Aさん、この度はご内定おめでとうございます。
Aさん
ありがとうございます。
MS記者
まず、就職活動の期間と応募数を教えていただけますか
Aさん
就職活動の期間は約3か月半です。 応募したのは全部で21社。書類選考が通過したのは11社。そのうち5社は辞退して、実際に面接を受けたのは6社。1次面接を通過したのが3社で、そこでまた1社辞退。最終面接を受けた2社のうちの1社から内定をいただきました。
MS記者
書類通過率、一次選考通過率、ともに高いですね。就職活動を始めた時と現在の自分を比較して、変化したことはありますか(考え方、スキル、働くこと・将来に対する考えなど)
Aさん
自分を客観視する機会が多かったので、今まで意識してこなかった自分の良いところ、ダメなところを知ることができました。 また、面接対策を繰り返していく中で、プレゼン能力がかなり身についたと思います。自己アピールに貪欲になりました。「面接は自分という商品を売り込む営業である」との考えから、自分の長所や熱意などを積極的に、わかりやすくアピールする努力をしてきました。質問されたことに対して当たり障りなく、優等生的に答えるだけの100%受け身の姿勢では、なかなか面接には受からないと思います。チャンスがあればどんどん自分の良いところをアピールして、少し波風立てて、面接官の印象に残るような応募者になることが必要だと思います。もちろんやり過ぎや暴走には注意ですが。
MS記者
「優等生的に答えるだけの100%受け身の姿勢」は確かに要注意ですね。採用は多くの候補者の中から1名選ばれるという感覚が重要ですからね。次の質問は、私もよくいただく質問なのですが、Aさんはどのような軸で求人を探していましたか。
Aさん
①ブラックでないこと(労働環境がまともであること)。
②自分の長所(コミュニケーション能力・うわべの爽やかさ)が生かせる仕事であること。
③人物重視の求人であること。
基準はこれだけです。業界や職種の限定はほとんどしませんでした。できるだけいろいろな求人に触れてみて、調べてみて、応募してみて、その中で徐々に自分の希望を絞っていった感じです。 変な先入観をもって、最初から業界や職種を限定するべきではないと思います。それは自分の可能性をつぶすだけ。何があるかわからないです。どこにどんな素敵な出会いがあるかは本当に本当にわからない。まずは、様々な求人と真剣に向き合ってみる。面接を受けるなどして「やっぱり自分には合わないな」と思ったら、その時にやめれば良い。偏見は捨てる。間口は広く、広く。
MS記者
応募段階で絞らないことは重要ですね。一方で選考が進めば、しっかりと決断することも重要です。Aさんは決断力があるので、とても良い就職活動をされたと思います。次の質問ですが、志望動機を書くにあたり、工夫されていたこと、意識していたことはありますか。また、面接を臨むにあたり、工夫されていた事、意識していたことはありますか。
Aさん
内定を取るために工夫したことはいっぱいあります。話す際の仕草や声のトーンにこだわってみたり、面接が終わるごとに反省ノートを作成してみたり。 しかし1番大事だと思った工夫は、業界研究・企業研究・職種研究を誰よりもしっかりとやる、ということです。職歴がなくてアピールできるスキルの少ない私のような人間にとって、業界研究・企業研究・職種研究を徹底的にやることは、内定を取るための必要最低条件だと思います。ネットで手に入る情報をチェックするのは、誰でもやることだからやって当然。私は他の応募者と差をつけるために、更に解説本や実務書を買って研究しました。例えば、人材派遣会社を受けるときには「派遣業界の動向とカラクリがよ~くわかる本」という本を読み、不動産会社を受けるときには「よくわかる不動産業界」という本を読み、法人営業の募集に応募するときには「法人営業のすべてがわかる本」という本を読みました。 なぜここまで業界研究・企業研究・職種研究をしたのか、ですが、私なりの目的が2つありました。 1つ目の目的は、面接官への間接的な熱意アピール。研究してきた結果を面接の場でさりげなく披露できれば、「お、こいつこれだけこの業界の実務について調べてきたってことは、真剣にうちに入りたいと思っているんだな」と面接官に思わせることができるんじゃないかと思っていました。 2つ目の目的は、“その企業が今回の募集で求めている人物像・理想像”を正確に把握する、ということです。こっちがメインの目的です。業界研究・企業研究・職種研究をしっかりとすれば、その企業がどんなタイプの人に入社してもらいたいと思っているのか、かなり具体的に見えてくるのです。例えば、対人関係上のトラブルが頻発する仕事であり、「ストレス耐性があって、体力があって、協調性を大事にできる人」が求められているんだな、とわかる。そこで面接では「私はストレス耐性があって、体力があって、協調性を大事にできる人間です」ということを、何とかひねり出した根拠事実とともに自己PRする。そうすると当然「こいつはまさに我が社が求めていた人物像に一致するタイプの人間だな」ということになる。もし業界研究・企業研究・職種研究をしっかりとせずに、企業が求めている人物像を正確に把握しないまま面接を受けると、「私はマメな人間です!」なんていう的を外したアピールをすることになりかねない。マメであることは確かに一般的に長所ではあるが、当該企業の面接の場ではふさわしくない自己PRである、ということになる。アピールできるものが少ない人間にとって、アピールすべきポイントを外すということは、かなり致命的であると思います。こういうことを一切考慮しないで、どの面接でも金太郎飴のように同じ自己PRをする人も多いと思いますが、それじゃダメなんだろうと思います。 こういった、企業が本当に求めている人物像を把握するには、当該求人広告や当該企業のホームページをチェックするだけでは不十分だと思います。そういったところでは、企業は綺麗ごとしか書かないので。それ以外の媒体を使って業界研究・企業研究・職種研究を徹底的にやって、募集している職種の実際の業務はどんなものなのか、本当はどれだけドロドロした世界なのか、を調べないと、この人物像は正確には見えてこないと思います。 長々と語ってしまいましたが、要するに「自己PR書や面接の場でアピールすべきポイントを間違えないために、業界研究・企業研究・職種研究はしっかりやる」ということです。
MS記者
業界、社風や求められるミッションによって、希望の人物像は変わってきますから、とても良いアプローチですね。Aさんは、法務職への就職活動をされていましたが、最終的に営業職への就職を決められた理由は何でしょうか。
Aさん
営業職が一番自分に向いていると思ったからです。しかし営業職へ心を向けるためには、まずは法務の呪縛をしっかりと解くことが必要でした。 法律知識を生かしたい、今までの勉強を無駄にしたくない、という思いから、やはり最初は「何が何でも法務職」と考えていました。しかしある時、「司法試験の勉強をしていく中で身につけてきたロジカルシンキング・ロジカルスピーキングは、法人営業でも強く要求される大切な能力である」と気づきました。これによって法務の呪縛から解かれて、法務職よりも自分に適性のありそうな営業職へ気持ちよくシフトチェンジすることができました。要するに、「営業職であっても司法試験受験生時代に身につけた能力を生かせる」ということに気づいたことによって、気持ちに余裕ができて、一気に選択肢を広げることができた、という事です。 どんな職種に就いても、今までの勉強が全く無駄になるということはないと思います。募集案件が少なく実務経験者が優遇される法務職に固執するのは、就職活動を長引かせる原因となるだけではなく、自分がより実力を発揮できるフィールドを自ら捨てるということにもなりかねないと思います。
MS記者
とても参考になるコメントありがとうございます。当社にも職種についてお悩みの方が多いので、是非、参考にしていただきたいと思います。次のご質問ですが、More-Selectionsのサービスで一番役に立ったことは何ですか(他の利用者にお勧めしたいサービス、利用方法など。モアセレの取説)
Aさん
御社んの、実践型就職セミナー(応募書類&面接)。 他の人の志望動機・自己PRが読めたり、それに対する講師の感想が聞けたり、自分の志望動機・自己PRを細かくチェックしてもらえたり。とにかく実践的・具体的なところが良かったです。自分の書類選考の通過率はけっこう高いと思いますが、それは間違いなく上記セミナーを受けて、それを踏まえた履歴書・自己PR書のブラッシュアップを繰り返してきたおかげです。もちろん面接でも役に立ちました。
MS記者
ありがとうございます。お役に立てて光栄です。Aさんから見て、内定を取りやすいロースクール卒業生、とはどんな方だと思いますか。
Aさん
「司法試験受験生っぽくない人」。 企業が抱いている司法試験受験生のイメージは、暗い・もやしっ子・頭でっかち・マイペース。その悪いイメージを払拭できている人が内定を取りやすいのだと思います。明るく、元気で、素直で、コミュニケーション能力があって、協調性のある人。3か月間の就職活動を通じて、「何ができる人か=どんなスキルをもっているか」と同じくらい「どんな感じの人か=どんな性格の人か」は重視されていると感じました。
MS記者
将来、どのようなビジネスパーソンになりたいですか。
Aさん
目の前の仕事を漫然と受身的にこなすだけでなく、常に経営者の視点をもちながら働けるビジネスパーソンになりたいです。 会社の全体像の中で、自分の仕事はどんな役割を担っているのか、企業価値を高めるにはその仕事をどのようにこなせば良いのか。常にそういったことを意識しながら仕事をしたいと思います。
MS記者
「企業価値を高める」というのは良い言葉ですね。今、必要とされる人材です。それでは最後に、なかなか内定を獲得できないで、悩んでいる就職活動中の方に一言いただけますか。
Aさん
焦って妥協しすぎないこと。 先が見えない不安や、1日でも早く就職を決めて落ち着きたい気持ちは、良くわかります。私もすっとそうだったので。 だけどヤケクソになって「入れてくれるならどこでも良い」とは決して考えないこと。ブラックベンチャーの営業とか、その気になれば雇ってくれるところはいっぱいある。でもそんなところに行ったら大変。実際にローの卒業生で焦ってそういう企業に就職し、劣悪な労働環境の中でひどい思いをしている人を何人も知っています。就職は今後の長い人生を左右する大事なものだから、自分の中でゆずれない部分はしっかりと守ること。 こんなことを言ったら身も蓋もないですが、内定がもらえるかどうかは、結局のところその会社と縁があったかどうか。ベストを尽くしても内定がもらえなかったなんてことはいくらでもある。そういう場合は、「この会社は自分と縁がなかっただけなんだ」と考えてすぐに切り替える。落ち込まない。引きずらない。31歳・職歴なし、という最低スペックの私でもとても満足のいく就職ができたのだから、間違いなく誰にでもチャンスはあります。ご縁のある会社と出会えるまで、マイナス思考になることなく、顔をあげて前向きに頑張ってください。決まるときは決まります。しかし暗い気持ちのままネガティブに就職活動をしている間は、内定はとれないのではないかと思います。
MS記者
暖かい言葉、ありがとうございます。是非、就業先でも前向きに頑張ってくださいね。
インタビューを終えて
インタビューの中にもありましが、「長い間、司法試験を勉強してきたんだから法務職にいかなくてはいけない(いくしかない)」という法務職の呪縛に陥っている人は何名かいます。しかし、シフトチェンジすることや、シフトチェンジ後に希望の職種を決めて適当な求人を探すことはとても困難です。Aさんは持ち前の高いストレス耐性をもって、この難題を克服し、見事、希望の営業職に就職されました。今後の活躍に期待させていただきたいと思います。