書類選考が通過した後には、晴れて面接が設定されますが、その前段階として「面接日程の調整」という過程があります。そして、就職活動に不慣れな法科大学院修了生の中には、この「面接日程の調整」段階で、企業側の心証を下げてしまっている方が少なくありません。
本コラムでは、面接日程の調整を行う上で注意すべきポイントについて解説して行きます。
注意点1:素早くレスポンスする
まず、大切になるのは、面接日程の調整のための連絡を素早く行うということです。企業側を出来る限り待たせず、迷惑をかけないようにするという面も勿論ありますが、人事担当者を含む多くのビジネスパーソンが、メール・電話等のレスポンスの早さで仕事の出来る出来ないを測っているという面もあります。
「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」という言葉があるように、企業に就職すると、様々な当事者と情報を共有し、連絡を取り合いながら仕事を進めて行くことになります。その際、レスポンスが遅い人がいると、多くの人の仕事が滞留することになり、チーム全体の仕事のスピード感が一気に落ちてしまいます。そのため、レスポンスが遅いビジネスパーソンは、総じて周囲から嫌われる傾向にあります。
人事担当者は、意識的にせよ無意識的にせよ、応募者の日程調整等のレスポンススピードを見ながら、応募者が「レスポンスが遅く、チームの仕事を滞留させる人材か否か」を判断しているところがあります。
だから、企業側から日程調整の打診があってから、1営業日以内には何かしらのレスポンスを返すのが望ましいとされています。その際、確定的な日程をすぐに提示できるに越したことはありませんが、アルバイト先等との調整で1営業日以内の日程提示ができないケースも十分にあり得ます。しかし、そうした場合でも、仕事が出来る人という心証を与えるという観点から、
「~との調整が必要なため、本日中の日程提示は出来ませんが、~との調整ができる●月●日までには必ず回答させていただきます。」
と、素早く企業側に伝えることが重要になります。
注意点2:出来るだけ直近の日程を提示する
法科大学院修了生の中には、「企業研究等の面接準備にできる限りの時間をかけたい」、「面接という重大で消耗するイベントを、一日に複数入れることは避けたい」といった考えから、かなり遠い日程を企業側に提示する方が少なからずおります。
しかし、選考をダラダラと長期間かけて行いたいという企業は基本的になく、「早く良い人材を見極めて、早期に入社して活躍して欲しい」と考える企業がほとんどです。そのため、面接日程の提示も、原則、早めの日程の方が喜ばれますし、逆に遠い日程の提示を受けた場合には、「志望度の低い人材なのでは…」という疑念を企業側に抱かせるおそれがあります。
その意味では、たとえ、それがピンポイントの日程であったとしても、都合がつく限り、出来るだけ近い日程を含めて提示した方が良い心証を与えることができると思います。目安としては、日程調整の打診があった日から1週間以内といったところになると思います。
ちなみに、面接の準備に時間をかけることのメリットばかりに目が行く方が少なくありませんが、最低限の企業研究を行ってさえいれば、後はそこにプラスアルファして何時間準備をしても、それほど面接の評価は変わって行きませんし、選考が長引けば長引くほど、新たなライバルが追加で応募して来るリスクが高まりますので、遠い日程を提示するメリットは、想像以上に小さいと言えると思います。
注意点3:遠い日程を提示する際には説得力ある理由を添える
上述のように、面接日程の調整の際に企業側に遠い日程のみを提示した場合、企業側からの心証を害するリスクがありますが、そうは言っても、事情があり、どうしても遠い日程の提示しかできないというケースも想定されます。
そうしたケースで何の説明もなく、ただ遠い日程だけを提示して来る方がおりますが、そこに遠い日程しか提示できない説得力のある理由を添えられると、心証が下がるリスクを抑制することができます。
法科大学院修了生の中には、「言い訳はよくない」という考え方のもと、状況説明を行わない方が多くおりますが、状況説明もなく、ただネガティブな情報を渡されても、ネガティブな心証を抱いて終わりとなってしまいますので、ご自身の心証を守り、選考通過率を上げるうえで、「どうして、このような状況になっているのか」を、必要十分な情報を開示して説明することが重要になります。
注意点4:選考段階による再調整の難易度を考慮する
面接日程の調整を行う際、
・面接日程案を提示したものの、企業側から返答がある前に、それらの日程に別の予定(他社の面接等)が入ってしまった
・具体的な日程を企業側から提示されたものの、既に先約が入っている
といったケースが有り得ます。企業側もこうしたケースが有り得ることは十分に想定していますので、面接日程の再調整の打診を行うこと自体に、それほど罪悪感を感じる必要はないと思います。
たまに、複数企業と面接日程を調整している方の中に、この「再調整の打診」を絶対的に回避するために、各社の日程が確定するまで、日程案の提示ができないと考え、レスポンスが遅くなっている方がおられますが、原則として、そうした心配はする必要はなく、シンプルにその時点で面接に行ける日程を幅広く提示すればよいと思います。
ただ、一般的に超多忙といわれる「役員」が面接官を務める最終面接等では、再調整の打診を行った場合に、かなり遠い日程での面接設定となる可能性がありますし、間に入る人事担当者の方からしますと、上司にあたる超多忙な「役員」にせっかくスケジュールを押さえてもらったのに再調整の打診を行うのは、かなり気まずいと感じる方も少なくありません。
そのため、最終面接等では、出来る限り、アルバイトや他社の一次面接等よりも優先して日程の調整を行った方が、選考通過率という観点からも有益だと思います。
注意点5:解釈の余地のない表現で日程を提示する
面接日程の調整を行う上では、「どのように日程を提示するか」も大切です。すなわち、一義的で解釈の余地のないわかりやすい表現で日程を提示することが重要となります。
特に、法科大学院修了生の多くは契約法務を担う法務担当者を目指すことになりますので、「解釈の余地のない文章を作る」ことを日頃から心がける必要があります。また、日程調整のしやすさという観点からは、出来るだけデジタルに処理できる表現を行うことが推奨されます。
【良くない例】
・来週ならいつでも
・12日の午後、12日の朝
・明後日の私のバイト開始前なら
【良い例】
・●月●日(月)●時開始~●時終了の時間帯
・●月●日(月)~●月●日(木) ※いずれも終日可能です。
・●月●日(月)以降の平日 ※いずれも、13時以降開始の時間帯を希望します。
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出来れば、日付に加えて曜日も入れた方が親切ですし、提示している時間が開始時間を示すのか、終了時間を示すのかを明示した方が誤解が生じないと思います。
※例えば、「9月4日(水)13時~15時」とだけあった場合、15時開始の面接が可能なのかどうかが一義的にはわかりませんので、「9月4日(水)13時開始~15時終了の時間帯」と記載した方が親切だと思います。
今回は、面接日程の調整時の注意点について解説して来ました。小さな心証の積み重ねが、良い方向にも悪い方向にも作用してしまいますので、ぜひ、今回の記事をご参考に、心証の良い日程調整を行ってみてください!
【筆者プロフィール】
齊藤 源久
法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。
2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。
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