就職活動中の皆さんが法務の求人を見る中で、「コミュニケーション能力」を求める求人を多数目にするかと思います。今日は、企業が求めるコミュニケーション能力、法務担当者に必要なコミュニケーション能力について考えて行きたいと思います。
■なぜ、企業は応募者にコミュニケーション能力を求めるのか?
弊社では毎年、数百単位の法務の求人を取り扱っておりますが、そのほとんど全てと言っていい求人において、「コミュニケーション能力」が求められています。なぜ、こんなにも企業は口を揃えてコミュニケーション能力を求めるのでしょうか。
実は、厚生労働省の労働白書を見ても、1990年代までは「コミュニケーション能力」は上位トップ5にも顔を出していない状況だったようです。それが2012年になって大きく躍進し、3位にランクインしたのを皮切りに上位に位置し続けています。
企業がこれほどまでにコミュニケーション能力を重視するようになった背景には、以下のような事情があると言われています。
・ますます知識が専門分化しており、「専門家同士の協力」なくして、成果をあげることができないという現実があげられます。
・たとえば、webサービスの運営ひとつをとっても、アプリケーションプログラマ、インフラエンジニア、デザイナー、マーケター、ビジネスプロデューサそれぞれに、深い専門知識が求められ、しかも彼らの知識が有機的につながらなければなりません。
・したがって、専門家は「専門知識」と「コミュニケーション能力」の両者を兼ね備えてはじめて、会社の業績に貢献できるのです。
出典:「コミュニケーション能力が低い人には、面白い仕事が回ってこない」時代に。(Books&Apps)
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つまり、現代では深い専門知識を持つ専門家同士が連携しながら仕事を行わなければならない場面が増えており、
➊自分の専門知識を他の分野の専門家が理解できるように噛み砕いて説明する力
➋他の分野の専門家が話している内容を理解する力
の両方が備わって、はじめて他の専門家と有機的に繋がりながら仕事が出来る=現代社会で求められる働き方が出来るということなのだと思います。
コミュニケーション能力といいますと、とかく「主体的に話す行為」ばかりが注目されがちですが、自分の専門でない分野の話を理解するために、的確に質問する力も同じくらい重視されることになりそうです。
実際、面接中の「逆質問」を重視する企業は少なくありませんが、この辺に理由の一端があると考えています。
■法務担当者に求められるコミュニケーション能力とは?
ここまで、現代のビジネスパーソンに求められるコミュニケーション能力という観点からお話をして来ました。
それでは、ビジネスパーソンの中でも、特に“法務担当者”に求められるコミュニケーション能力はどのようなものでしょうか。
法務担当者も専門知識を扱うポジションですので、➊専門知識を噛み砕いて説明する力、➋的確に質問して専門外の事項を理解する力が求められるのは同様ですが、センシティブな情報に触れることの多い法務担当者だからこそ、特に求められるコミュニケーション能力があります。それは、
➌言いづらいデリケートな話題を相手の気分を害さずに伝える力
➍相手が言いづらい内容を懐に入り込んで聞き出す力
です。
なぜなら、法務担当者には、
・法令違反を理由に現場担当者に「NO」を突きつけなければならない場面
・都合の悪いことを開示せずに腹の中にしまいこんでいる現場担当者から真実を聞き出さなければならない場面
が少なくないからです。
そういった意味では、「この人になら、ついつい何でも話せてしまう」、「シビアな内容でも、この人に言われると不思議と腹が立たない」という人物像の方が法務担当者に向いていると言えるかもしれません。
最後に
以上、企業が求める「コミュニケーション能力」についてお話しました。
普段、法科大学院修了生と接していて、法科大学院修了生の中には、専門知識を“正確”に伝えることを重視するあまり、専門的な用語を並べ立てる方が少なくない印象を受けています。もっとも、この点は、“正確さ”よりも、“ニュアンス”をわかりやすく伝えることを重視することで、専門知識のない人とのコミュニケーションがずいぶんスムーズになると思います。
また、➋他の分野の専門家が話している内容を理解する力という観点では、自分が理解している点と理解していない点を短時間に判別し、理解していない点をしっかりと質問し確認して行くことで、高めて行けると思います。
普段から、こうした取り組みを行うことで、企業から本当に評価される「コミュニケーション力」を高めてみてはいかがでしょうか。
【筆者プロフィール】
齊藤 源久
法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。
2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。
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