普段、法科大学院修了生の就職支援を行っていると、知名度のある人気企業に就職したいという声をよく耳にします。
このことは、法科大学院修了生の就職支援ブログ(第3回)でも触れましたが、法科大学院修了生全般の傾向として、「よりエリートっぽい選択肢を好む」という傾向があるように思います。
しかし、本当に人気企業への入社が人生の最善の選択肢なのでしょうか。先日、この問いに関連して興味深い記事を見かけました。
記事の中でも紹介されていますが、現在、日本マクドナルドのチーフ・マーケティング・オフィサーを務める足立光氏は、日本マクドナルドが、取引先の中国の食品加工会社による「消費期限切れの鶏肉納品」や「異物混入」などを原因として過去最大の赤字に陥っていたときに、順調だったアパレル大手ワールドでの執行役員国際本部長としての地位を捨て、同社にあえて入社した方です。その理由は以下です。
ほとんどの人は業績のいい会社、人気のある会社に行きたがります。その気持ちもよくわかります。でも、会社選びは株式を選ぶのと一緒で、いま人気がある会社はこれから成長が鈍化していく会社だと僕は考えています。
出典:東洋経済オンライン 『マック復活の仕掛け人が語る「逆境の仕事術」』p.1
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若い人が『ブランド』として、人気のある会社に行きたい気持ちもなんとなく理解できます。でも、人気のある会社に在籍しているのと、自分に実力がつくのとは、まったく別の話です。
出典:東洋経済オンライン 『マック復活の仕掛け人が語る「逆境の仕事術」』p.2
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30年安定してサラリーマン生活を送れるところって、そんなにないんですね。であれば、人気企業に行くという考え方ではなくて、何かあっていきなり会社から放り出されてもいいよう、自分が個人として成長できる会社を選ぶべき、という話なんです。
出典:東洋経済オンライン 『マック復活の仕掛け人が語る「逆境の仕事術」』p.2
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ざっとまとめると、
・会社は栄枯盛衰で、今繁栄している人気企業が数十年後も繁栄している可能性は低い。
・人気企業への在籍と「個」としての実力の向上は別の話
・会社の栄枯盛衰に左右されずに安定した人生を歩むために「個」として成長できるところに行くべき
ということだと思います。
本文中でも語っておりますが、30年間繁栄を続ける会社はほとんど存在しないと言われています。
下記記事でも、「10年単位の有力企業ランキング100社」のデータを元にそのことに触れています。
たしかに、現在不人気の企業に入社して、その企業が将来繁栄する保証は何もありません。そのため、「会社に自分の人生の趨勢を預ける」という価値観で見たときに、将来繁栄するかどうかわからず今現在も繁栄していない企業に入社するよりは、少なくとも現在繁栄している企業に入社する方が分がいい賭けだと考えるのも理解出来るところです。
しかし、現代社会では、技術革新とグローバル化・IT化、消費者ニーズの多様化などを原因として、商品(事業)ひいては、会社のライフサイクルがどんどん短くなる傾向にあります。
それは、「個」の力を高めずに、会社の浮沈に自分の人生の趨勢を預けるキャリアが、どんどん分の悪い賭けになりつつあるということに他なりません。
先の日本マクドナルドの足立氏は、キャリアをドラゴンクエスト(RPGゲーム)に例え、大変な場所でないと自分の経験値は上がらないと主張しています。
正直、年齢と経験のバランスの問題から、法科大学院修了生が人気企業に就職できる可能性はそれほど高くはありません。その一方で、自分が人気企業に行けない現状を嘆く法科大学院修了生は少なくありません。
しかし、上述のように企業のライフサイクルが短くなっている現代社会において、今現在の人気企業に就職できないことは、必ずしもネガティブな結果をもたらさないと言えます。
例え、自分自身に与えられた就職選択肢が人気企業でなかったとしても、与えられた活躍の場で懸命に仕事に取り組み、修羅場をくぐって「個」の力を高める。そうすることで、会社にとって価値の高い人材へと成長し、その高めた価値が長期的に人生の安定に繋がるのではないでしょうか。
【筆者プロフィール】
齊藤 源久
法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。
2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。
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