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就職ノウハウ

[面接対策]10年後のビジョンの描き方

Q.【ブログ記事】10年後のビジョンの描き方

A.

法科大学院修了生の就職支援をしていて、度々聞く悩みの一つに、

 

「面接で10年後のビジョンを聞かれたときに何と答えていいかわからない」

 

というものがあります。

 

実際、司法試験受験界という“働くことのイメージ”が描きづらい環境に長年いた法科大学院修了生にとって、働き始めてから10年後をイメージして面接の場でビジョンを語るのは非常に難しいことだと思います。

そのため、多くの法科大学院修了生は苦し紛れに、

 

 

・周囲の人から頼られる法務担当者になりたい(法務と言えば●●と言われる存在になりたい)

・新人教育などを手掛けたい

・契約法務がしっかりと出来るようになりたい

・法務部長になりたい

 

 

などといった、抽象的な内容を回答することが多いようです。

 

そもそも、この種の質問はどのような意図で行われるのでしょうか?

 

ポテンシャル採用において、究極的に、選考する側が見ているのは『入社後に成長しそうか否か』という点になります。

そして、「入社後に成長しそうな応募者」とは、具体的には、

 

 

[➊能力面]

地頭が良く、教わったことをスピーディーに理解・吸収でき、

 

[➋人柄面]

周囲が思わず応援したくなるような(教えたくなるような)、可愛げのある人柄で、

 

[➌キャリア軸]

やりたいことがハッキリしていて、尚且つ、そのやりたいことと自社でのキャリアが相当程度マッチしていて、高いモチベーションで自発的に仕事を頑張れる人材

 

 

 

ということになると思います。

 

そして、企業側は、[➌キャリア軸]を確認する一環として、「入社10年後はどうなっていたいですか?」といった類の質問を行っています。そのため、この種の質問への回答としては、

「やりたいこと・なりたい自分を明確に説得力をもって伝えることができ、尚且つ、それが応募先企業で実現可能な内容であること」

が重要になって来ます。

この観点で、上述した法科大学院修了生の代表的回答例を見て行きましょう。

 

 

■周囲の人から頼られる法務担当者になりたい

→ふわっとしていて、どうなりたいかが不明瞭です。また、内容が抽象的な分、本気でそうなりたいと思っているのかという「説得力」の面で疑問を持たれがちです。

 

 

 

■新人教育などを手掛けたい

→こちらも、いまいち、どうなりたいかが不明瞭で、内容が抽象的な分、本気でそうなりたいと思っているのかという「説得力」の面で疑問を持たれがちです。新人教育に対する思い入れなどを、過去の体験に基づき説明する必要があると思います。

 

 

 

■契約法務がしっかりと出来るようになりたい

→一見、やりたいことが明確なように聞こえますが、「しっかりと出来る」とはどういう状態を指すかを定義づけ、その上で、なぜ、契約法務をしっかりと出来る人になりたいのか、説得力のある説明が必要になると思います。ただ、企業としては、法務経験が10年を超える人材に対しては、契約法務以外の高度な業務も任せたいと考えることが多いため、目指すところが低いように感じさせるおそれがあります。

 

 

 

■法務部長になりたい

→法務部長がどのような責任でどのような仕事をするのか、おそらく、面接時点では把握していない可能性が高いですので、そうした状況で「法務部長になりたい」と述べることは、事実上、「何をするかわからないものになりたい」と主張することになり、「説得力」の面でかなり弱い印象になります。また、法務部の方が面接官を務める面接などでは、法務部長の椅子を狙う方が面接を担当している可能性がありますので、こうした発言が面接官の反感を招くおそれもあります。

 

 

結論として、いずれも、あまり良い印象を残せないということになります。

 

では、この種の質問に対してはどのように回答すればよいのでしょうか?

 

まずは、シンプルに、実際に10年後のビジョンを描くことから始めることだと思います。面接での説得力のある発言とは、本音をベースとした発言に他ならないからです。

 

コツとしては、抽象的で構わないので、まずは、「本気でなりたい自分、本気でやりたいこと」を自分自身の中で明確にすることです。もっとも、職歴がない方が多い法科大学院修了生にとって、働き出してどうなりたいか、何をやりたいかを見定めることは簡単ではないかと思います。

 

ただ、アルバイト経験のある方であれば、アルバイトで働いてみた実感を元に、どんな仕事人でありたいかを抽象的に思い描くことは、あるいは難しくないかもしれないですし、それが難しい場合でも、尊敬できるアルバイト先の上司、尊敬できるビジネスパーソン(知人、ロースクールで知り合った弁護士等)の特徴を分析し、どのような点に憧れるかを言語化し、「なりたい自分」に置き換えてみるのもよいと思います。

そして、そのようにして言語化した働き方を法務担当者として行った場合に、どのような仕事ぶりになるかを思い描けば、一旦、「法務として入社後にどうなりたいか」の軸が打ち出せると思います。

 

 

【例】

飲食店のアルバイト先の上司が、お客様からのクレーム対応時にとても頼りがいがあり、尊敬出来る。

 

【分析】

・人の嫌がる対応をすすんで買って出る責任感のあるところに憧れる

・怒っているお客様に対しても堂々と振る舞えるところに憧れる

 

【ビジネスパーソン軸】

・責任を自ら背負いに行けるビジネスパーソンになりたい

・どんな相手にも堂々と接することが出来るビジネスパーソンになりたい

 

【法務パーソン軸】

・周囲が腰が引けてしまうような難しい案件が来たときに、すすんで仕事を引き受けられるような自信のある法務担当者になりたい

・取引先、他部署の人間、役員など、誰を前にしても堂々と交渉・プレゼンができる法務担当者になりたい

 

→まとめると、「自信に溢れ、自ら責任を背負いに行けるような法務担当者になりたい」

→そのためにどうするか?

→法務部内で修羅場をくぐる

 

【回答例】

私自身が尊敬するアルバイト先の上司ですとか、過去に出会ったビジネスパーソンなどを振り返ったときに、私の中で、「責任を自ら背負いに行ける人」、「どんな相手にも堂々と接することが出来る人」に対して強い憧れがあると感じています。そのため、私自身が法務担当者になった際も、「自信に溢れ、自ら責任を背負いに行けるような法務担当者」になりたいと考えています。そして、そのためには、自信を支えるだけの経験が必要になると感じていますので、これからの10年で出来る限り難しい案件・苦しい案件にすすんで手を上げて、これらを乗り越える経験を積み、10年後には、御社の法務部が抱える一番厄介な案件も、堂々と引き受けられるような人材になっていたいと思います。

 

 

入社前の段階ということもあり、どうしても、抽象的な話になりがちではありますが、本音をベースとした話なので、「なりたい自分」に対する説得力は相応に出せると思いますし、面接官にも、どんな法務担当者になりたいかをある程度イメージさせることが出来ると思います。

仮に、もう少し具体的な話がしたければ、付け足す形で、

「後は、個人的に●●な分野や●●な分野に強い関心がありますので、そうした分野で強みを発揮出来る法務担当者になれたらと考えています。」

と伝えられれば、ひとまず十分なのではないでしょうか。

 

本日は、将来のビジョンの描き方についてお話して来ました。今後の面接のご参考になれば幸いです。

 

 

この記事を読まれた方は、ぜひ下記の記事も読んでみてください。

『そもそもの話、「就職活動」とは何か?

『面接ではどのようなことが聞かれるのでしょうか。』

『法科大学院修了生のための面接前の緊張対策』

 

 

 

 

 

【筆者プロフィール】
齊藤 源久

法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。

2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。

 

 

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